
| 真夜中の札幌 |
手稲山人の読書録 ノンフィクション 2 |
TOP |
目次 |
HOME |
… 2001年4月8日 …
福田 芳生 著 『恐竜の私生活』 −化石から探る恐竜たちの毎日−
地人書館 1998年9月刊
生物学にはもともと興味があったのですが、古生物学への関心はSF作家イワン・エフレーモフの影響かも知れません。彼の作品の中に「星の船」(世界SF全集第22巻 早川書房に「アンドロメダ星雲」と併録)というのがあります。その中に、他の星から地球に来ることの出来る知的生命体がいたとしたら、どのような姿をしていただろうかと想像して、科学をそこまで発達させているとすれば頭脳と視聴覚器官を備えていたに違いない、考えるシーンがあります。古生物学者の彼は、人間に近い
extra-terrestorial を考えたようです。また、「星の船」の中で動物の大きさについて議論があり、大きな恐竜はその大きさゆえに滅んだのではないかとあったように思います。本書に近づいた理由には、やはり恐竜が絶滅した事情を知りたいと思ったこともあります。
本書はおそらく、著者が好奇心の強い若い読者のために恐竜についての基礎的な知識を提供しようとするものであり、読みやすい「恐竜学入門
」を意図したものと思います。 研究対象は化石であり、生きている現物はどこにもないわけです。物語は地質時代で言えばおよそ中生代全体にあたります。詳しく言えば、恐竜が産声を上げたのは「三畳紀」の中頃
、すなわち約2億2千5百万年前から、恐竜が絶滅した「白亜紀」の終わり頃、約6千5百万年前までとされます。
地質時代 古生代(カンブリア紀、オルドビス紀、シルル紀、デボン紀、石炭紀、二畳紀、5億6千4百万年前〜2億4千2百万年前)
中生代(三畳紀、ジュラ紀、白亜紀、2億4千2百万年前〜6千4百万年前)
新生代(第三紀、第四紀、)
@恐竜が生まれるまで
爬虫類の元祖は杯竜類(はいりゅうるい:椎骨の前後が杯のように窪んでいる。「根幹爬虫類」とも呼ばれる)といわれる。爬虫類が大躍進をとげる源には「有羊膜卵」があった。これは卵の中で胎児が発育できるように、胚が羊水の中にあり、胎児の排泄物等は尿膜腔の袋に捨てられるようになっていました。「有羊膜卵」は乾燥した厳しい陸地で生きるために「生命維持装置を完備した小型宇宙船」であったといいます。そして古生代の終わりに起きた大絶滅を生き延びることのできた爬虫類の中から、恐竜の先祖となった「槽歯類」(顎の骨に歯を固定するための「歯槽」を持った爬虫類)が登場します。(三畳紀の後半には、同じように歯槽を持つ「獣形類」(哺乳類様爬虫類)から最初の哺乳類、モルガヌコドンが誕生しました。哺乳類の先祖は爬虫類だったわけです。)
槽歯類の区分・・・5亜目(原竜亜目、ペリコシミア亜目、偽鰐(ぎがく)亜目、エトサウルス亜目、植竜亜目)
「偽鰐類」は乾燥した大地に進出した勇敢な槽歯類であり、肉が大好物な彼らは、動きの鈍い両生類や草食性の獣形類を食べまくり、絶滅に追いやります。偽鰐類ユーパルケリアの骨盤の構成骨は、下方に曲がった恥骨、まっすぐな坐骨
とやや幅広の腸骨からなり、のちの恐竜類の2大勢力の1つ「竜盤類」(トカゲ型の骨盤を持つグループ)の骨盤の原型になりました。
ユーパルケリア(南アフリカ、三畳紀初期)・・・「脚」も胴体を地面から高く持ち上げるようになる。「頭骨」は大型の眼窩内部に鞏膜骨輪というリングがあり、その後方に大小2対の「側頭窓」が開いた。「歯」は小型で鋭い短剣の形をし、獲物の皮膚や肉、内臓を引き裂いた。ユーパルケリアは偽鰐類から本物の肉食恐竜へと進む「進化の主流派」と思われる。
オルニトスクス(:鳥に似たワニ。スコットランド北東部エルギン、三畳紀後期)・・・頑丈な後脚で立ち上がり二足歩行することが可能。鋭い歯で獣形類を捕食。
ポストスクス(テキサス州西部ポスト市近郊、三畳紀後期)・・・オルニトスクスよりも一段と進歩した肉食性の偽鰐類。二足歩行しており、頭はかなり大型。優れた視覚器官と鋭い臭覚器を備えた「当時の優秀なハンター」であり、後の肉食性恐竜の原型(上下の顎の構成骨が関節で緩く結合しているため口腔を自在に広げることが可能。前肢には鋭い鉤爪にのついた5本の指あり)となった。
また、恐竜の元祖としては「イオラプター」(:夜明けの盗人。アルゼンチン、三畳紀中頃)をあげる研究者もいます。
A草食性恐竜の誕生
本来は肉食性の恐竜が草食性の獣形類を貪り食ううちに、その胃袋に詰まった植物の葉や茎、種子などを肉片とともに摂取し、いわゆる雑食性になり、次第に草食性へ移行したとされる。そして「地球上の脊椎動物には例外なくセルロースを分解する酵素が欠如している」ことから植物を消化するための装置が必要になります。
「鳥盤類」(鳥に似た骨盤を持つグループ)はすべて草食性であり、「竜盤類」の中からも草食性の恐竜が現れてくるところに食物摂取に関わる環境の変化があったように思われます。現代の肉食獣と草食動物の比率は1:40〜1:100であるが、これは恐竜の時代でも変わっていないと言います。
ヘテロドントサウルス(:異形の歯を持ったトカゲ。南アフリカ、三畳紀末)・・・顎の前方に鋭いナイフのような牙を持ち、後方に厚いエナメル質で覆われた「ノミ(鑿)」に似た歯が並んでいる。肉食から草食への過渡的な段階にある雑食性の恐竜(鳥盤類)です。
このヘテロドントサウルスからジュラ紀のカンプトサウルスを経て、次の白亜紀に入るとカモノハシ竜の仲間(鳥盤類)が爆発的に勢力を増大します。
また竜盤類ではテコドントサウルス(三畳紀後期)が最古の草食性恐竜であるが、このテコドントサウルスから「四足歩行の竜脚目」、アパトサウルスやブラキオサウルス、マメンチサウルスのような超重量級の草食性恐竜(体長20m程度)が生まれました。
B恐竜の卵と子育て
恐竜の繁殖方法がわかったのは、1923年モンゴルで角竜プロトケラトプス(白亜紀後期、鳥盤類)の産卵場跡が発見されたことによります。噴火口状の土盛りをした中にかためて10個ほど置き、上部は露出していた。太陽熱を利用して孵化したものと思われる。成竜の身長2mに対して直径7cm、長さ20cmと卵が大型化している事情を著者は、胎児の成長を助けるためと考えている。この産卵場に近接して小型の肉食性恐竜が発見された。この恐竜は卵を狙って侵入し、逆にプロトケラトプスに殺されたものと思われ、オビラプトル・フィロケラトプス(:角竜好みの卵盗人)と名づけられています。
1970年、ジョン・R・ホーナー博士(ロッキー博物館)はカモノハシ竜の大営巣地から体長1mほどの幼体を発見した。調べてみると、脚が歩くには不十分であるにも拘わらず、歯が損耗していることがわかった。これは親竜が食物を巣まで運んで子供に与えていたためであり、このカモノハシ竜には「マイアサウラ」(:面倒見の良い母親)という学名がつけられました。
C最大の草食性恐竜
恐竜は出現当初から大型であったわけではなく、「温暖な気候が続き豊富な食物に恵まれた中生代の中期以降(ジュラ紀後半)から、ひどく大型化します。」
サイズモサウルス(:地震竜。史上最大の竜脚類。重量100t前後、体長30m、体高20m)は、からだは大きいけれども大人しい草食性の恐竜で、ジュラ紀末に大繁盛しました。おそらく眠っている時を除けば、1日中植物の葉や茎、種子などを食べ続けていたと思われます。胃の中には多くの「胃石」があって、食物と擦り合わせていっそう細片化し、消化を助けようとするものです。
D史上最大最強の肉食性恐竜
ティラノサウルス(:暴君竜。白亜紀末。体長12m、重量8t以上)の正体は活発に獲物を追跡し、生肉を好む凶暴極まりない「恐竜の殺し屋 dinasaurs'killer」であった。上下の顎には長さ20cm以上もある肉厚の短剣のような歯が並び、獲物の大きさや距離を正確に認知できる視覚、優れた臭覚器を備えていたから、著者がティラノサウルスを高性能戦車に譬えたとしても不思議ではありません。(但し、「最大最強」のタイトルは最近アルゼンチンで発見された「ギガノトサウルス」に譲ったそうですが。)
恐竜は身体を巨大化させることで、体温の低下を防ぐことに完全に適応した動物で、「慣性恒温動物」といいますが、ティラノサウルスの場合、身体の中心部で40度前後の体温があったそうです。尾や足の末端では低めだったとしても4度以内とのことですから、血液循環のスピードは速く、体温と体の大きさのバランスがとれていました。この時すでに哺乳類型の「CaやPの代謝能のずば抜けて高い」骨細胞が生まれていたのです。
肉食性恐竜に対して草食性恐竜の反撃も用意されており、頭部に大型の角を持つもの(トリケラトプス)や分厚い装甲板で身を包んでいる装甲恐竜(ユウオプロセファルス)が現れました(白亜紀末)。
哺乳類も鳥類も恐竜から生まれたのに恐竜が絶滅してしまったのはなぜか?
白亜紀に入って活発になった大陸移動、造山運動によって陸地が分割され、住み難くなったということの外に、やはり巨大隕石の激突があったのです。ユカタン半島の北岸で発見された異常磁気の巨大な円は、隕石が地表に激突してで来たクレーターであり、隕石の大きさは直径100kmに及ぶのではないか、と言われています。